|
「……らんらんら♪ららら、らんらんらん♪……」 亜麻色の髪をした少女が少し道を外れた森の中、楽しそうに歩いていた。 白のブラウスの上につけた青い左の肩と胸を部分的に覆う魔導アーマーの肩部分では黄色の生き物がなにやらくるくる踊っている。 少女は魔導師の卵アルル・ナジャ。 黄色の生き物はアルルが友達と言っているカーバンクル。 「んっ!?」 少しあがり坂という獣道に近い部分を進んでいくと、アルルは開けた視界で何かを見つけた。 風化でボロボロになった石、それが何個も重なっていた。 途切れ途切れに広がっている重なり合った石は、 ある部分はアルルの背丈ほど。ある部分はアルルの足首ほど。まちまちの高さで、 時間の流れにより自然と崩れていった壁のように見えた。 「はいきょ?……かな?」 アルルは呟き、カーバンクルと一緒に首をかしげた。 アルルが廃墟の中らしき部分に入ると、部屋の区分けをしていたか、そのような跡が見られた。 「ものすごぉく古そう……」 アルルはぐるりと見渡し、呟く。 「ぐうぐう」 いつの間にやら、肩からおりたカーバンクルがとことこと中央に歩いていく。 「カーくん、あぶないよ」 アルルはそう言いながら自身もカーバンクルのところに歩いていく。 すると突然、足元の感覚がなくなった。 「へっ?」 アルルはなんとも間抜けな声をもらして、暗闇の底へと落ちていく。 「ぐーーー!!」 穴のそばでカーバンクルが慌てたような声を出した。 少しの間、どうしようどうしようという感じでいると、意を決したようにアルルの後を追った。 小さな黄色の身体はすぐに暗闇に飲まれていった。 意外と高さはなかったようで、アルルの落下は長くは続かなかった。 といっても、人が怪我をするほどの高さは十分にあった。 「うきゃっ!?」 「ふぎゅっ……!」 落下後の自分の姿をいろいろ想像して、危うく失神しかかったアルルは、柔らかなクッションのような…それにしては固めのような、そんな感触と落下が終わった衝撃に声をあげた。 重なるように、踏み潰されたような声がきこえたような気がしたが、アルルは気付かない。 「……え?……無事?」 無傷の自分にアルルが不思議に思っていると、下がもぞもぞと動いた。 「!?」 「……さっさと、どけっ」 地面と思っていたら、動いたのでアルルが驚くと同時にかすれたような声が下から聞こえた。 アルルは急いで飛びのき、魔法の集中に入った。 「誰っ!?」 「っつぅ……誰ってなぁ……」 頭をさすりながら立ち上がった人物は呆れたように、顔を向けた。 アルルは気付いていなかったが、ライトの光があたりをほのかに照らしていた。 その光が照らす中、その人物はしかめ面をしていた。 「シェゾ!?」 何でこんなところに?という感じにアルルは光の下にいる人物を見た。 彼は闇の魔導師シェゾ・ウィグィィ。 「いきなり、降ってきやがって……」 シェゾは眉間にしわを寄せた。 「だいたい、何で上から落ちてくんだっ!?」 シェゾは怒鳴りながら、指を上に向けた。 何気なくアルルは指を追って顔を向けると、小さな穴から光が見えた。 と、アルルが見上げていると、小さな影が光にぽつんと現れた。 「あっ……」 「あん?」 アルルの声にシェゾも顔を上げると、 ゴスッ とても痛そうな衝撃音が聞こえた。 「づぅ〜〜〜〜〜〜〜」 「ぐぅ〜〜〜〜〜〜〜」 顔をおさえてうずくまるシェゾのすぐそばで、落ちてきたもの、つまりはカーバンクルがシェゾ同様に痛そうに目じりに涙を浮かべていた。 「カーくんっ」 アルルはカーバンクルを抱き上げた。 「ぐうぅ〜〜〜〜〜〜〜☆」 カーバンクルはアルルに気付くと痛みもなんのその。 嬉しそうに、いつもの低位置である左肩に飛び乗った。 「……おい」 二人に半眼のシェゾが声をかけた。 「なに?」 「その黄色いの、殴らせろっ」 「いや」 シェゾが手を出しだすと、アルルはカーバンクルを庇うように後ろに下がる。 「………………なら、いい」 しばらく、黙るとシェゾは意外とあっさり引き下がり、アルルに背を向けた。 「?」 アルルはその様子に変だと感じた。 そんなアルルに気付かず、シェゾはライトの光を操りアルルと離れるように歩き出した。 「あっ……ちょっと待ってよ」 アルルはシェゾの後ろをついて行った。 「ねえねえ、ここダンジョンなの?」 「ああ」 「目的のものはもう見つけた?」 「いや」 「そっかぁ」 「で、何でついてくる?」 くるりとふり返ったシェゾは半眼でアルルを見る。 「だってボク出口知らないもん。 シェゾは知ってるんでしょ。 だからついて行くんじゃん。 ねー、カーくん」 「ぐー」 アルルはあっさりと言い、カーバンクルと頷きあった。 「………………」 一瞬がっくりと呆れたように、肩をたらしたシェゾはすぐに元に戻り、さっさと歩き出した。 アルルは当然のように、その後について行った。 結構時間が経つのでは、とアルルは思った。 それほど、深くはないが広さがあるらしく、次の階層への階段を見つけるにそこそこ時間がかかった。 そして、二人はやっと最下層に着いた。 「ちっ……やはりたいした事ないな」 シェゾはアイテムから魔力を取ると、きびす返した。 「ねぇ」 「何だ」 祭壇らしき場所から降りてくるシェゾにアルルが声をかけた。 「そういえばさあ。 めずらしく「お前が欲しい!」て言わなかったね」 ずるぅっ アルルの言葉にシェゾは階段を踏み外した。 といっても、後数段だったので、床に着地はできたが。 「あのなぁ」 思わずシェゾは呆れた声を出した。 「だって、いつも会って最初に言うからさ」 アルルは、どうりで変だなぁて思ったんだ。と、一人納得をしていた。 「……………………」 それを見て、どうにでもしてくれ、とでも言う雰囲気な無言のシェゾであった。 「おい、戻るんだろうが」 気を取り直したシェゾはアルルに声をかけた。 「あっ、うん」 アルルは頷いた。 すると、シェゾはアルルの肩を抱きテレポートを使った。 「うひゃ」 いきなりの事にアルルは驚くが、すぐに転移独特の感覚に身を任した。 シェゾが入ってきたダンジョンへの入り口らしき場所に着くと、ダンジョンとは一味違う明るめな闇があった。 「うわあっ……!!」 アルルは上を見上げて、感嘆の声をあげた。 空一面に小さな灯たちが広がり、一部分には川のように灯たちが集まっていた。 「星の川だねぇ。 あれ?でもあれって天の川だよね? なんで今見えるんだろう?」 「別におかしくないだろ」 空を眺めているシェゾが言った。 「なんで?だって七月七日でしょ、見えるの?」 「そうとも限らんだろ。星なんだからな」 「そっか」 それもそうか、と頷くアルルにシェゾは続けた。 「この時期見えるんだろう。 それに今日も七夕には変わりない」 「へ?」 シェゾの言葉にアルルは、何言ってんの?、ときょとんとした。 「月の暦を使っていたところでは今日が七月七日なんだとよ」 「へえ〜〜」 シェゾが肩を竦め言うと、アルルは感心したようにシェゾを見た。 しばらく二人は星々の川を眺めていた。 「キレイだよね……」 「ああ……」 うっとりと自然の美しさを見つめるアルルの言葉に同意すると同時に別の意味でもシェゾは頷いた。 星明りの中、輝く少女を美しいと、彼は心で感じていた。 「ぐぅぐぅ〜〜〜!」 突如、寝ていたカーバンクルが叫んだ。 「あっと、ごめんごめん。 そうだね、もう帰ろうか」 お腹がすいたカーバンクルにアルルは謝った。 「じゃね、シェゾ」 と言って、走り出そうとしたアルルにシェゾは声をかけた。 「道わかんのか」 「あっ…」 自分いた場所とは違うため、現在位置がどこなのかまったくわからないアルルには道だってわからなかった。 シェゾは長いため息をつくと。 「とぶぞ」 と一言、言ってアルルの肩を再びつかんだ。 「ありがとね」 アルルはシェゾにそう言って、家の中に入って行った。 「けっこう良い日だったね、カーくん。 また、遠出しに行こうね♪」 「ぐーーー☆」 おわり |