snow fantasy
風月 藍




白き華は舞い 光は踊る
  同じ闇の空 星は瞬く

 晴れた空 広がる闇 月は無くとも星は輝き
白き華は空を舞い 光は淡く輝き空を踊る

  不思議な幻想 起こるかも
     雪は奇蹟 起こすかも
snow fantasy……



 どんちゃん騒ぎのサタンの塔フロア1階大広間。
 本日は恋人たちが一部の人に恨まれつつも楽しげに笑い話し、共に過ごすクリスマスイブ。
 サタンの塔では、2日間連続クリスマスパーティーが行なわれている。
「うわははははははははははははは!!」
 意味の無い酔っ払いの笑い。
「うわぁっ!?」
 ぼむっ
 某魔女見習いの薬物実験の犠牲者の悲鳴。
 そこらかしこで、何か騒いでいる。


 そんなパーティー会場とは別に、サタンの塔付近の丘。
 寒空の中、湯気を出すカップを両手に持ち、アルルはボーと空を眺めていた。
 いつもの服装ではなく、長袖の白いワンピースに、青いカーディガンの格好でも夜の冷気はとても寒かった。
「コート着てくればよかったかなぁ…」
 カップの中のココアを一口のみ、アルルは呟いた。

「何してるんだ?」
「うわっとっと…」
 突然声をかけられ、アルルはびくっと身体を震わせ、カップを落としかかった。
「シェゾ?」
 カップを無事に掴むと、アルルは後ろをふり向いた。
 さくさく、草を踏みながら歩み寄るシェゾが、先程の声の主であった。
「何してるんだ?」
 アルルの隣に座ると、シェゾはもう一度同じ事を聞いた。
「何って……空を見てたんだよ。
 キミこそどうしたの?
 いつも、騒がしいのは嫌いだって来ないのに」
 アルルが不思議そうに首を傾げシェゾを見た。
「別に」
 シェゾは一言だけそう言うと、そっぽ向いた。
「?」
 答えになっていない答えに、アルルはただ首を傾げるしかなかった。
「まぁ……いっか」
 たまにはいつものセリフや勝負が無いのも良いな。
 アルルはそう思い、再び空を見上げた。
 月は見える範囲にまだ無いが、星がいくつも輝いているので、さほど暗くは感じられなかった。
 逆に、淡い輝きが身体を包み込むようにアルルには感じられた。

 ふっと、アルルが横を見ると、黙って同じように上を見上げるシェゾの銀髪が星光に薄く光を纏っていた。
「…………」
(黙っていれば、ホンットにキレイなのになぁ)
 アルルは心の中で呟きながらも、シェゾに見惚れていた。
「んっ?どうした?」
 アルルの視線に気付いて、シェゾは顔を向けた。
「えっ?!何でもないよっ」
 まさか、シェゾに見惚れていた、などと言えなくて、アルルは顔を真っ赤にしてぶんぶん首を振った。
 ついでに手も揺れてカップの中身がチャプチャプとこぼれそうだった。
「ただ、いつものセリフ言わないし、勝負だ、って言わないから、変だなぁて思ってただけだよ」
 早口になりながらアルルが言うと、
「いつものねぇ、言ってほしいのか?」
 シェゾはニヤリと意地の悪い、どこか楽しそうな笑いを浮かべた。
「なっ…!
 そんなわけないでしょっ!このヘンタイ!!」
 アルルは真っ赤なのをもっと赤くして立ち上がった。
 そのさい、手からカップが落ち、パシャっと音を立てて、中身が地面へと吸い込まれていった。
「…変態だぁ……
 何度も言ってんだろ!
 俺は変態じゃねぇ!!闇の魔導師だ!!」
 変態…シェゾに対する禁句の一言にシェゾも立ち上がった。

「だっ、だって、そうじゃないかっ!
 い、いっつもいっつも
 『お前がほしい』って、誤解をうける言葉ばかり言うし!
 本当は…ボクの魔力がほしいくせに!!」
 ポロポロと、激しく叫ぶアルルの瞳から涙があふれてきた。
「っえ?おい?!」
 突然の涙に、シェゾは大変焦っていた。
「あれっ?」
 アルルも自分の頬に触れて不思議がった。
 どうして涙が出てくるのか、アルル自身にも分からなかった。
(なんでボク泣いてんだろう?)
「なんで泣くんだよ。
 俺は何もしてねぇぞ…」
 頭をくしゃりとつかみ、シェゾは疲れたような顔をした。
「ごめん…」
 拭いても拭いても、あふれてくる涙を俯いて隠し、アルルは小さく謝った。
「…………
 別に謝らなくても良い」
 くしゃくしゃ、とさらに髪を掻き乱しかと思うと、シェゾはマントでまくようにアルルを抱きしめた。
「!?」
 驚きにアルルは身を強張らせた。
 鎧をしていないので、黒い服ごしから、シェゾの体温がアルルに伝わってくる。
(あたたかい)
「とりあえず服を提供してやるから、さっさと泣き止め」
 ぶっきらぼうな声はきっと照れ隠しだろうと、シェゾの赤い顔を見たらアルルでもすぐに分かったであろう。
 シェゾのぬくもりといきなり抱きしめられた驚きとで、アルルの涙はすでに引っ込んでいたが、アルルはもう少しこのままでいたいと思った。
(あれ?)
 そう思う自分にアルルは何か引っかかった。

「あっ!?」
 もやもやとした何かをつかみそうになったのに、シェゾの驚いた声にアルルはそれをつかみそのなった。
「どうしたの?」
 そのため、ちょっと不機嫌になったアルルはもろに声にそれを出していたのだが、
「うわぁっ!」
 ひらり、ふわり、と舞い落ちる白い雪に感嘆の声をあげた。
 星の小さな光をうけた雪は、まるで華と思いたくなる美しさで、淡く輝くその様子はまるで光が踊っているようだった。
「きれぇ…」
「ああ…」
 二人ともそれを見つめていた。
 けど、アルルは雪だけではなくシェゾも見つめていた。
 雪の明かりに照らされた顔を見つめ、綺麗だと思っていた。
(…………)
 気持が、想いが、アルルの心の中にあふれてくる。
 ――――好き…大好き
(…あっ……!)
 もやもやとしたもの、その気持の正体を知りアルルは心中驚いていた。
「おい……」
「えっ……あっ、何?」
「もういいか?」
 じっと見ているアルルの視線に、何か恥ずかしいような気分になっているシェゾが、真っ赤な顔で言うと、アルルは今の状態を思い出した。
「あっ、うんっもう平気だよ!」
 意識し始めたら、途端にアルルはとてもとても恥ずかしくなり、急いでシェゾから離れた。
 その時、一瞬…ほんの瞬きするほどの間でアルルは気付かなかったがシェゾが名残惜しそうな表情を見せた。
(だああああ…!!何、考えてんだ俺は!)
 先程から心の中で何度も自分の行動を突っ込むシェゾ。
 折角いい感じだというのに、目的を果せずにいることにシェゾは苛立ちを感じていた。
(てか、こいつもニブ過ぎだ…俺がこんな事すんのはこいつだけなのに、全然その意味分かってねぇし)
 アルルが奥底にあったものに気付いたばかりに対して、シェゾはずいぶん前にそういう感情をアルルに抱いていた。
  アルルを自分だけのものにしたい。
  誰にも触れさせず、自分の腕の中で……。
 どんどん、想いは強くなっていった。

「………………………………………………………………………」
 シェゾはシェゾで本日の目的をどう切り出すか悩み、
 アルルはアルルで気付いてしまった想いに悩む、
 と一人の世界にそれぞれ入ってしまって、沈黙が場を占めていた。
(……きまづい…………!)
 以心伝心というか、なんというか、二人は同じ事を感じていた。
 ヒュゥゥ〜〜〜〜〜〜
 軽く風が吹いた。
 光粉のような雪が二人の周りに、回りながら落ちていく。
 二人の周りに光があふれるように落ちる雪は淡く輝いていた。
 どこか幻想的風景のように見える二人の影。

「アルル」
 風におされたかのように、シェゾは思い切った。
「なぁに?」
 呼びかけられてアルルは自分の思考から現実に意識を戻した。
「今日はイブとはいえ、クリスマスだからな」
 そっぽ向き、よく分からん理由を言って、シェゾはアルルの手に冷たい金属質なものを渡した。
「え?」
 虚を疲れたアルルは手の平に転がる小さな…指輪に、
「えええ!!」
 驚きの声をあげた。
「えっ?え?ええっ!?」
 アルルはパニックになって、何度もシェゾと手の平に転がるシンプルで細い銀の指輪に顔を動かした。
 シェゾはシェゾで、照れているのか、赤い顔をそっぽ向けたまま、ちらりとアルルを見ていた。
「うそぉ……」
 アルルは思わず呟いた。
「何だよ」
 ぶすっとした感じにシェゾは変かよ、っと言った。
「ううん。
 嬉しい♪」
 本当に嬉しそうにアルルは笑い、衝動的にシェゾに抱きついた。
「ありがとう!」
 そして、そのまま衝動に任せて、とても小さくだが、先程分かったばかりの想いを感謝の言葉の後に続けた。
「好きだよ……シェゾ」
「なっ!?」
 思いにもよらない言葉に、抱きつかれた衝撃を流せず、シェゾは丘に転がった。
「うわぁっ」
 もちろん、抱きついたアルルも転がった。

「ぷっ…」
「くっ…」
 あははははははは……!
 二人は草をつけたお互いを見て笑いあった。
 そのまま、仰向けになった二人に、雪華は舞い落ちる。
「ふっ…わぁ……!」
 真下からの光景は素晴らしかった。
 星から光をうけた雪は白く淡く儚い灯になり、濃紺の空にいくつもの星が、強く輝いたり、小さく輝いたり、していた。
 シェゾは身体を横にし、アルルの傍に来ると、小さく耳元で囁いた。
「同じ想いだからな。
 俺は今まで何も略していなかったんだからな」

「え?」
 シェゾは言うことだけ言うとすぐ離れたが、アルルの瞳はシェゾの言葉をとらえた事で、金色の瞳がさらに輝いていた。
「ねぇねぇ、それって……」
「同じ事は二度も言わんぞ」
 アルルが近づいてくると、シェゾは上半身を起こし、そっぽ向いた。
 一瞬アルルはふくれたが、何を思ったのか、シェゾの目の前に移動し、
「……もっとはっきりとした言葉がほしいなぁ」
 と言った。
「なっ!?」
「寒いねぇ」
 言えるかぁあああ!!と真っ赤になるシェゾに突拍子もなく言い出した言葉と共にアルルはシェゾに飛び込んだ。

「おい……」
「あったかぁい…」
 シェゾの懐にもぐりこむと、シェゾの腕とマントを前に持ってくる。
 いきなりの大胆なアルルの行動にシェゾは途惑った。
「あのなぁ……」
 ため息をつきながらも、シェゾはアルルに腕をまわした。

 ちらほらと、ときたま触れる雪は冷たいのに、とても暖かい、そんな風に感じる二人であった。


〜FIN〜


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