お・ん・せ・ん
風月 藍



「うわぁ〜」
 目の前が湯気で白く閉ざされる。
 ここはとある温泉地。
 ちょっと、変わった一行が泊まりに着ました。


 ちらほらと雪が降る日。
 大地が白に染まる、その場に天空をも貫く高さの塔が立っていた。

「さむいよぉ〜」
「ぐぅ〜」
「だらしないわねぇ。わたくしなんか、全然平気よ」
「それはあなただけですわ」
「なんですってぇ〜」
 塔の中の最上階にはなぜかコタツがあった。
 そのでかいコタツには女の子が三人いて、コタツのすぐそばには水の入ったタライがあった。
 タライの中には下半身が魚のうろこさかな人セリリがいた。
 コタツにいる女の子たちは、亜麻色の髪に金の瞳をした幼い感じのする少女アルル。そのすぐ下には寒そうに小さな体の大半をコタツに突っ込んだ黄色いウサギのような生き物がいた。
 青い髪をしたナイスバディの持ち主ルルー。金髪碧眼、青いローブを着た美少女ウィッチ。
 三人の少女たちがなにやら、寒いの寒くないのとケンカをしていると奥から緑の髪に深紅の瞳をした金の角を持つ人物にしてこの塔の持ち主サタンがやってきた。

「なぜ、私がこんな事をしないといけないのだ」

 なぜかその手にはみかんが入ったかごがあった。
 そして、その後ろからは銀髪碧眼の黒を基調した服を着た美青年、アルル他にはヘンタイと呼ばれる シェゾと黒髪に茶色の目をした優しそうな青年ラグナスが飲み物を抱えながらきた。
「なぁ」
「なんだ」
 ラグナスがシェゾに声をかける。シェゾは不機嫌そうに答える。
「何で、オレたちはこんな事してるんだ?」
「知るか」
 不思議そうな顔をしたラグナスの質問に不機嫌をよりいっそう高めたシェゾが冷たく言う。

「何してんだよ〜。早く、飲み物〜」

 サタンが持ってきたみかんをさっそく剥いて、口に入れつつ、皮ごと食べようとするカーバンクルをおさえ、アルルがシェゾたちをせかす。

「さむいなぁ〜」
「まだ、言うのあんた」
 アルルの言葉にルルーが呆れたように言う。その手にはしっかりサタンを捕まえていた。
 捕まえられたサタンは逃げ出そうともがいているが全くびくともしない。
「だってぇ、さむいだもん」
 口を尖らせ、むくれながら言うアルル。
「温泉なんか、いいですわよねぇ」
 なにやら、年よりじみたことをいうウィッチ。
「いいね!」
 そして、その言葉にのるアルル。

「あの〜」
 ほとんど、聞き取れないような小さな声でセリリがアルルたちに声をかける。
「なに?」
 アルルがそれに答えるとセリリは顔を真っ赤にしながら言った。
「あの……温泉なら……近くの場所、知ってますけど」
「ほんと!」
「あっ……はい」
 グイと顔を近づけて言うアルルにセリリは首を縦に振る。
「じゃあさ、じゃあさ、皆で行こうよ」
 アルルが他のメンバーに向かって言う。
「アルルがそういうなら、私は行くぞ」
「サタン様が行くなら、私も行きますわ!」
「いいですわねぇ」
「たまには休むのもいいな」
 シェゾを除いた面々はうなづく。
「シェゾは?」
「いい」
「えぇ〜。いいじゃん、行こうよ〜」
 アルルがシェゾの袖を引っ張る。
「アルル、そんなやつはほっとけ。それより私とともに……」
「やっぱ、行く」
 本来の天の邪鬼的な部分のせいかそれとも他に理由があるのか、サタンの言葉にむっとしたシェゾは結局、行くことを承諾した。





 とゆうのような事で、アルル、ルルー、ウィッチ、セリリ、サタン、シェゾ、ラグナス、
 そして、なぜかどこからともなくかぎつけてきたインキュバスがセリリの案内のもと温泉地にきていた。

「あったかいよぉ」
「けっこう、悪くないものね」
 温泉につかっているアルルとルルーがそう言って、幸せそうに表情を緩める。
 その近くでは気持ちよさそうにしているウィッチがいた。
 そして、平気なのだろうかと思うがセリリはウィッチの隣で同じく気持ちよさそうにしていた。
 しばらくの間、四人は言葉もなくお湯につかっていた。

「ルルーさん、やっぱ、胸大きいですわね」
 突然、ウィッチがそう言った。
「あら、そう。これくらい、普通じゃないの」
「おおきいよぉ」
 ウィッチに言葉を返すルルーにアルルがちょっとすねたように言った。
「あんたが小さいだけじゃないの」
 アルルがすねている理由がすぐにわかったルルーはからかい口調にアルル言った。
「べっ、別に小さくないもん!」
「あら、あら、無理しちゃって。大丈夫よ、世の中には形で選ぶ連中もいるから」
「ルルー!!」
「おほほほほほ……」
 拳を振り上げて追いかけるアルルにルルーはお湯の中を軽やかに逃げる。
「全く、元気ですわねぇ。そう思いません?」
 はじめに言い出したウィッチを二人を見て呆れた声でセリリに聞いた。
「でも、やっぱ、アルルさんたちはああじゃないと」
 かすかに笑いながらセリリは言った。ウィッチもかすかに笑いながらうなづいた。




 さて、そのころの男湯は。
「う〜ん、いい気もちだぁ」
 伸びをした後ゆっくりと湯に体を埋めていくラグナス。
 隣には少し体を赤くしているシェゾがいる。
「たまにはこうゆう感じもいいな。そう思わないか?」
「まあな」
 穏やかに会話をする二人。

「ところで、そこの二人。何してんだ」
 シェゾは首を後ろに回し、壁際で聞き耳を立てているサタンとインキュバスに声をかけた。
 誰も気付かないがその声には微かに怒気が含まれていた。
「いや、ミーはナイスなレディたちで少し目の保養を」
「そうそう」
 焦ったような声で言い訳どころか墓穴を掘りまくりの二人に白い目をシェゾは向けた。

「やめといたほうがいいぞ」
 ラグナスは見つかったらどうなるかと予想して、二人に静止の声をかける。
「ほっとけ。……先に出てるぞ」
 シェゾはラグナスに一言いうとさっさとあがっていった。
「ああ。……でも、ほっとけて言うのもなぁ」
 うなづくラグナスはサタンたちを見ながらポツリとつぶやいた。


 その時、女の湯のほうから聞こえた声に思わず、喉を鳴らしていたサタンとインキュバス。
 聞き耳ではものたりないようでこっそりと覗こうとさほど高くない壁に頭を上げていった。
 サタンなどはこっそり翼もつかっている。

 そうまでしてみたいのか、とそこまで理解できないラグナスは呆れていた。




 そして、追いかけっこがルルーの勝利で終わり、ちょっと疲れたように湯船に顔までつけるアルル。
「ぶくぶくぶくぶく……」
 他の三人はその周りでなにやら楽しげに談笑。
 ふっと、アルルが上を見ると

「あっ!」

「なんですの?」
「どうしたんですか?」
「なによぉ」

 声を上げるアルルの目線を追う三人が見たのは、
……サタンとインキュバスの二人の顔だった。

「………………………………………」

 沈黙が六人の中に流れる。
「きゃーーーーーーー!!!!!!」
 四人は同時に悲鳴を上げて、それぞれ手元にあった桶やら石鹸やらを二人に向かって投げた。
「オー!」
「ぐわっ!」
 スカコーンと見事命中した品々の音とともにドスンと二人が倒れる音がした。
「おい!大丈夫か!」
 声をかけるラグナスに満足げな表情で気絶したサタンとインキュバス。
 その後頭部には大きなこぶが。どうやら、倒れた時に二人とも強く強打したらしい。





「……サタン様ですからって、案なのはよくありませんわ!見たいのでしたら言ってくださればいいのに、それならわたくしがいくらでも……vvってそうじゃなかったわ。
 とにかく!覗きだなんて、サイテーですわ!!」
 食事の間にルルーの怒鳴り声が響く。
 ルルーの前には正座をさせられたサタンとインキュバスがいた。
 ルルーの後ろでアルルたちも怒りの表情と白い冷たい目で二人を見ていた。
 口を出したら、被害が及ぶことをよく分かっている残りの二人は端にいた。
 ラグナスは気の毒そうにサタンたちを見て、シェゾは自業自得とゆう風に笑っていた。
 ただ、シェゾがラグナスに後の事を聞いた時、微かに殺気が漂ったようにラグナスは感じた。


このあと、ルルーの説教と女性陣の怒りは食事がくるまで続いた。



「ねぇ、ねぇ。卓球しよう!せっかくだしさぁ」
 とゆう、アルルの一言により、卓球大会が開かれた。
 一対一を女性陣側と男性陣側でやり、その後、女性と男性のトップが戦うとゆう風だ。

第一試合
   第一戦 ルルーVSセリリ
 ルルーの迫力により、セリリ大泣きしながら棄権。ルルー圧勝。
   第二戦 アルルVSウィッチ
 白熱した試合はデュースにもつれ込んだ結果アルルの勝利。
   第三戦 サタンVSインキュバス
 サタンの強烈な球はインキュバスの顔面に当たる。風呂の時にも落とさなかった厚化粧のおかげで大怪我は逃れたものの気絶。サタンの大圧勝。
   第四戦 シェゾVSラグナス
 アルル、ウィッチ戦同様、デュースにもつれ込む。なかなかつかない決着もシェゾの負けず嫌いと迫力の勝利。シェゾ何とか勝利。

第二試合
   第一戦 ルルーVSアルル
「あんたには負けないわよ〜」
 迫力ある声とともに低い速い球が飛ぶ。
「うひゃっ」
 思わずよけるアルル。
「うっそ〜」
「サタン様はわたくしのものよ〜。きゃっ、言っちゃったvv」
 もう一球、打った球を何とかアルルが返すと妄想一歩手前のルルーは気付かず、球はそのまま入る。
「ルッ、ルルー?」
 妄想に入ってしまったようです。アルルが声をかけても、応答なし。
 ルルー棄権。アルルの勝利。
「なんだかなぁ〜」

    第二戦 サタンVSシェゾ
「ふふふ……」
 含み笑いをしながら構えるサタン。
「…………」
 無言で構えるシェゾ。
 その時にラグナスは微かな殺気を感じるがほんの一瞬なので気のせいかと思う。
「いくぞ!サタ〜ンスペシャル!!」
 日ごろの恨みとともに打たれるサーブをいとも簡単にシェゾは打ち返す。
 なぜかその間も無言。そして、デュースにもつれ込んだすえ、シェゾのマッチポイント。サーブもシェゾ。
「ぷよなみに弱いな」
「なにぃ!!」
 シェゾの言葉に怒り心頭のサタン。めらめらと後ろで炎が燃えている。
 パコンとシェゾサーブを打つ。さすがに負けられないとサタンは拾う。微妙なはね方をする球。
「ちっ」
 何とか打ち返した球は低く、ネットに当たる。シェゾ側に落ちそうになる。
「なっ!」
 ネットに当たりそのまま台の角にぶつかり横にはねる。油断していたサタンはそれに驚きの声を上げる。
「くそっ!」
 飛び跳ねるサタン。しかし、間に合わない。
 トーン、球がはねる。  ズサァと滑り込むサタン。  小さくガッツポーズをとるシェゾ。
 嬉しいのかただの卓球で。それにまだ、アルル戦が残っているぞ。
「くぅぅぅ……」
 悔し泣きをするサタン。肩をたたくルルー。
 とゆうか、そんなに悔しいのか。ただの卓球だろ。

第三試合
   アルルVSシェゾ
「いっくよ〜。えい」
 アルルが打った球はあっさりと返される。しかしアルルも負けてられないとばかりに打ち返す。
 長い間打ち合いは続く。
「アルル〜。そんなやつに負けるなぁ〜〜!!」
 サタンの叫びの応援の声が聞こえる。他の面々をほぼ、アルルの応援。
「オレは悪者か」
 思わずぼやくシェゾ。
シェゾさ〜ん。がんばって〜
 シェゾは気が付かないがセリリはちゃんとシェゾの応援をしていた。
 そして、その声をしっかりとアルルは聞いていた。
 なぜかむっとした感じになり、さっきよりも強い威力になっていく。
「な、なんだ」
 いきなり、アルルが怒気を纏う姿と球の威力にシェゾも驚く。
「むーーー。えい!!」
 スマーーーーッシュ!
 見事にアルルのスマッシュは決まった。これでアルルはマッチポイント。
「やった☆あと、一点だ」
「むっ」
 負けず嫌いぷりを出し始めたシェゾ。負けられないとばかりに構える。アルルのサーブ。
 パコンパコンと再び打ち合いが続く。
「アルルー!いけぇー!そんな変態に負けるなぁー!!」
「誰が、変態だ!!」
 サタンの叫び声に思わず、シェゾは反応した。
「えい」
 パコン、コン、コンコンコン、コロコロ。
「あっ」
 その隙を逃さすアルルが力弱くネット際に玉を落とした。
 シェゾが注意を戻したときにはピンポン球がコロコロと台の上を転がり、シェゾのそばまできていた。
「ボクの勝ちー♪」
 アルルの勝利。
 こうして、卓球大会は幕を閉じた。


 そして、今度は宴会が始まる。



「うっ……」
 頭を抑えながらシェゾが目を覚ましたのはまだ夜明け前だった。
 シェゾの周りには宴会で酔いつぶれた他の面々が寝ていた。
 その中にアルルがいない事にシェゾは気付いた。
「どこいったんだ?」
 シェゾは立ち上がり、旅館の中を歩き出した。中を一通り見るがアルルの姿はなく、外をみてみる事にした。
 すると、アルルは中庭の岩に座って、上を見上げていた。
「おい、アルル。何してるんだ」
 シェゾはアルルがいるほうに近づいていき、声をかけた。
「ほえ、シェゾ。空を見てたんだよ。ここはお星様がきれいだなぁと思って」
 アルルはシェゾのほうに振り向き、指で空を指して答えた。
「星?」
 アルルの指を追ってシェゾは空を見た。
 そこには一面に白い光が散らばっていた。
 大きい光、小さい光、集まっている光、広がっている光。いろんな光があった。
 黒い闇色の空を白い光が彩っているそのさまはとても美しかった。
「ああ、確かに綺麗だな」
 シェゾは上を見上げたまま、そう言った。
「でしょ」
 アルルは嬉そう言った。
「だが、ちょっと寒いな。お前もそんな所にいると風邪を引くぞ。って、お前は引かないか」
 最後の方は意地の悪い笑みとともに言った。
「ちょっと、どうゆう意味だよ」
 旅館の中に歩いていくシェゾを追いかけながらアルルは文句を言った。
「そのまんまの意味だよ」
「むー。ヘンタイに言われたくないやい」
「オレは変態じゃねえ!」
 アルルの言葉に過敏に反応するシェゾ。

「クッシュン」
 突然、アルルがくしゃみをした。
「ほらよ」
 シェゾは外を寒いと見て、浴衣の上に自分のマントを羽織っていた。
 それをはずしてアルルに投げ渡した。
「ありがと」
 アルルはちょっと顔を赤くしながらお礼を言って、それにくるまった。
 アルルの浴衣姿だったので少しおかしな感じがしたがそれもご愛嬌とゆうものだ。

 こうして、温泉にやってきた奇妙な一行は一泊二日で帰っていった。


おわり


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