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日だまりの草原で、2匹の猫は丸くなって眠っていた。 一匹は光を浴びて薄く輝く白銀の毛の猫。 もう一匹は茶色をもっと薄くしたような亜麻色の毛の猫。 銀の毛の雄猫はシェゾ。 亜麻色の毛の雌猫はアルル。 猫たちの間ではそう呼ばれている、野良猫である。 「ふぁ…………」 シェゾは、アクビをしながら、ゆっくりと身を起した。 「ん〜……」 ノビをして、身体を伸ばすと、隣で眠っているアルルを起さないようにしながら、シェゾはそろりと歩き出した。 と、突然。シェゾは背中に重みを感じて、バランスを崩した。 「どわっ!?」 ギュムっと踏まれたシェゾの上で、アルルはじっと綺麗な金目でシェゾを見つめた。 「シェゾ。どこに行くの?」 穏やかな声なのに、何となく迫力を感じる気がするのは、けして、シェゾの気のせいではないだろう。 「………………………………」 黙秘を通そうとするシェゾに、アルルはにっこりと笑った。 「サタンと決闘でしょ」 ばれてる……。 シェゾはそう思った。 「わかってんなら、邪魔するな」 ズバリと言い当てられて憮然としながら、シェゾは顔を捻って上にいるアルルをみた。 「やだもん」 きっぱり即答でアルルはシェゾの言葉を拒否した。 「…………なら、 せめて、上から退いてくれ」 長年の付き合いから、この状態で粘るだけムダ、と判断し、シェゾは疲れたような声で言った。 「サタンと決闘しない?」 「(時と場合と気分で変わるが、一応は)しない」 かなりの言葉を略して、シェゾは頷いた。 アルルも一応長い付き合いなので、少し胡散臭げにシェゾを見ながらも 「絶対だからね」 念を押しつつ、アルルはシェゾの背中から降りた。 すると、シェゾはダッと駆け出した。 「あっ!?シェゾ!!」 アルルの声を後ろにシェゾは決闘場所へと急いだ。 そこへ、突然横から何かが飛び出してきた。 「ぐーーーー!」 それはそんな風に鳴き、シェゾに突進してきた。 「なっ…!!?」 慌てて急ブレーキをかけ、横にそれたシェゾは、 ちょうど黄色いそれが飛び出してきたのと同じ茂みにいきよい良く突っ込んだ。 「どわっ」 「あーっ だいじょーぶ?」 とことこ、と歩いてきたアルルは声をあげて、茂みに声をかけるが、興味は飛び出してきたそれにいっていた。 それは、黄色で兎のような耳と丸いしっぽ。ちっちゃな手足と、普通の生き物には見えなかった。 「ぐぅ!」 「やぁ! ボク、アルル。キミは?」 「ぐぅ〜ぐぐっぐ!」 「へぇ〜、カーバンクルて言うんだ。 じゃあ、カーくんだね★」 「ぐう!」 「何、普通に会話してるんだよ」 身体やしっぽに葉を何枚もつけたシェゾがぼそりとアルルの後ろで呟いた。 「へ? シェゾはわかんないの?」 「当たり前だ。 ただ、ぐぅぐぅ言っている言葉が分かるか」 そんな事を言ったら、人間にはにゃあにゃあ鳴いているようにしか、シェゾたち猫の言葉は聞こえない。 「ぐっ!?」 アルルがシェゾに振り返った時、カーバンクルは何かを見つけたのかなんかしたのか、いきなり走り出した。 「あっ、待ってよう!」 アルルは、カーバンクルの後について行った。 「おいおい、追いかけるのかよ」 めんどくさい。サタンとの決闘もある。 しかし、アルルに何かあっては嫌だ。 「振り回されてんなぁ……」 サタンの決闘の原因だってアルルなのだ。 あのバカ猫が自分のアルルにちょっかいを出すどころか、シェゾを邪魔者扱いするので、喧嘩を買ってやったのだ。 はぁぁ…とため息をついて、シェゾはアルルたちを追った。 「ううう……どこ行っちゃたのぉ……」 街外れから、少し中に入ったところでアルルはカーバンクルを見失った。 「諦めて、戻るか?」 「えぇ〜!! シェゾは気にならないのぉ!?」 不満の声をあげて、アルルは振り返った。 「まぁ……(気にならないでもないが)」 「気になるでしょう」 きめつけの体制に入って、アルルは左へととことこ歩き出した。 「あらっ、アルルさん。それに、シェゾさんも」 きょろきょろしながら歩いていると、横の長い階段から、声がふってきた。 「ウィッチ」 とても薄い黄色の色素が日光でまるで金色のようになり、長めの毛がさらさらと流れた。 ウィッチは階段の上に建つ古い神社にすんでいる。 と、言ってもめったに人の来ない、神主もたまに来る程度のどちらかというと、空家に近いところなので、ウィッチは飼い猫ではない。 まぁ、ちゃっかり薬屋のお兄さんたちから日々の食べ物を調達しているが。 「どうしたんですか? まさか、迷子じゃあるまいし、そんなにきょろきょろして」 「あー、うん。 ねぇ、ここらへんでうさぎみたいな耳をした黄色い子みなかった?」 「どーみても、普通の生き物には見えない額らしきところに赤い石がはまった二足歩行の生き物だ」 「はあ?」 アルルがウィッチに問い掛けるのに続いて、ずいぶんな言い草でシェゾが続けた。 二匹の言葉に首を傾げ、ウィッチはしばらく考え込んだ。 「……見ませんでしたわねぇ。 でも、遠くの方からラグナスさんの声と奇妙な声は聞きましたけど」 奇妙な声。 シェゾとアルルは顔を見合わせ、カーバンクルの鳴き声を思い出した。 「どっち?」 「あっちの方ですわ」 前足を上げてウィッチが指した方向は、子供たちの通学路があるほうだった。 「ありがとー」 アルルはウィッチにお礼を言いつつ、駆け出した。 シェゾはそれに続きつつ、腹減ってきたなぁと思った。 「あっ、いたいた。 ラグナスーー!!」 子供たちが帰り始めの時刻。 歩いている子供の間をぬいながら、アルルは塀の上にいるラグナスに声をかけた。 シェゾとして、他の雄にアルルが声をかけるのは面白くない。 そのためか、不機嫌そうにアルルの後ろに続き塀に上がった。 「どうしたんだ?」 シェゾまで一緒で自分のところに来るのは相当珍しいので、ラグナスは少し驚いて聞いた。 「あのね……」 アルルは先程ウィッチに聞いたのと同じ事を聞いた。 「ああ、それなら、見たよ。 住宅街の方に向かって行ったような」 「ありがとう。じゃあね」 聞きたい事を聞くと、アルルはさっさと、走り出した。 「なぁ」 「なんだ」 「決闘は?」 決闘とかそこら辺の事情を知っているのでラグナスはそう声をかけた。 「サボった」 「…………ルルーが怖いな」 「ああ」 短い言葉の応酬のあと、シェゾはアルルを追った。 そして、カラスが夕焼け空を鳴きながら飛ぶ時刻。 住宅街を歩く二匹は美味しそうな匂いがいろんなところから漂うのを感じていた。 「見つかんねぇな」 「うん…… 他にも色々と聞きたかったのになぁ」 「諦めろ」 「うぅ〜」 シェゾの言葉にアルルは悩んでいるような声で唸った。 「見つけたぞ!シェゾ!!」 突如、後ろから声が聞こえた。 「んっ?」 「あっ」 振り返った二匹は、 染められたのか、深いグリーンのふさふさしたのと、青いさらさらした、長毛の猫たちを見た。 「サタン」 「ルルー?」 シェゾは面倒になったな、という思いで、 アルルはどうしたんだろう、と言う思いで、 それぞれ、猫の名を呼んだ。 「シェゾ! キサマ、決闘に来ないどころか、私のアルルと一緒にいるとは何事だ!!」 「キミのじゃないよ!!」 「おい、言うだけムダ」 「だけど……」 何度言ってもアルルをもらうんだぁ〜、とサタンは、アルルは自分のだと言い張る。 アルルもいいかげんつっこむのが嫌になってきている。 シェゾは、闇討ちでもしてしまおうか、という気分である。 「それより、 さっさと逃げるぞ」 ぼそぼそと小さな声でシェゾが言うと、 「なんで?」 思わずアルルが首をかしげた。 シェゾは呆れるようにアルルを見た。 「……あっ、決闘サボったんだっけ」 一瞬の間のあと、アルルは思い出して、頷いた。 「めんどうになるね」 「だろ」 ぼそぼそと二匹が言い合っている間、サタンは何か色々と叫んでいた。 「ちょっと、何をぼそぼそ言いあってんの!!」 ルルーが、最愛のサタン様の隣で、二匹に文句を言ったとき、 二匹は同時に背を向けて、走り出した。 「あっ?!」 「こらっ!逃げるなぁ〜ーーーーーーーーーー!!!」 ルルーはあらっと言う感じに声をもらし、サタンは怒鳴り声を上げて、追いかけようとした。 そんな声を後ろに二人が住宅街を駆け抜けようとすると、 「きゃーーーーーー!!!」 「ぐっぐ、ぐぅっ!!」 家から人の悲鳴が聞こえた。 その一瞬後に、カーバンクルが近くの塀から飛び出してきた。 最初に見たときと、体型がずいぶんとまん丸になっていたように見えたが、すぐに最初の時と同じ体型になった。 「ぐぅぐっ!」 しゅたっ、と手を上げると、元気良くカーバンクルは駆け出した。 「カーくん!」 もちろん、その後ろにはアルルが。 そして、アルルの後ろにはシェゾが続いていった。 「疲れた……」 「でも、楽しかったよ♪」 「そうか?」 「うん★」 二匹はいつもの場所で寄り添い丸まった。 次の瞬間、「すーー」と安らかな寝息が聞こえた……。 おわり |