イマドキ WIZARD
風月 藍


「てめぇ!やっと、みつけたぞ!!」
 柄の悪い兄ちゃんたちが四、五人。一人の少年を指差して、叫んだ。
「んっ?
 オレのこと?」
 肝心の少年の方は、声に振り返ると自分を指差して、あたりをきょときょとと見回した。
 勘違いかなぁ、と思ってみたものの少年以外に裏路地を歩いている人間は見当たらない。
 まあ、当然だろう、誰が裏路地なんて何があるかわからない場所をうろちょろするものか。
「てめぇ以外にいねぇだろうがっ!!
 さっきはよくもコケにしてくれたなぁ……カクゴしやがれよ!!」

「………………………………
 覚悟しやがれよ、と言われても……
 あんたら、ダレ?」
 すごんで少年を囲んでいた兄ちゃんたちは少年の言葉に思わず固まった。

「…………てめぇ……おちょくるのいいかげんにしやがれっ!!
 さっき、てめぇがおれらのジャマをしたんじゃねぇか!!」
 先ほどから話していたリーダー格の男は、かなり怒り極限状態であるようで、声を荒げて唾を飛ばす勢いで怒鳴った。
「邪魔…………?」
 少年は首を捻って、該当する事を思い出そうとする。
「………………ああ!」
 しばらくしてから、何か思い当たったのか、ぱんっと手を叩いた。

★ ★ ★ ★ ★ ★ ★

 ――数時間前

「やめてください!」
「いいじゃんか……おれらと楽しいことしようぜ」
 そこそこお綺麗と見える女性の腕をつかんで下心みえみえの下品な笑いを男は浮かべた。
 その後ろでは、その腰巾着とも言える同年代の兄ちゃんたちが同じく下品な笑いを浮かべていた。

「……あのさ」
 と、突然、柄悪い兄ちゃんたちの後ろから声が聞こえた。
 全員がその声の方向を向くと、一人の少年がいた。
「そこにいられると邪魔なんだけど」
 赤みを帯びた髪をぽりぽりと掻きつつ、リーダー格に緑の瞳を向けた。

「ああんっ?」
 男は、不審そうに少年を見た。
 それは当然の事であろう。
 こんな裏路地で突然現れて、通りすがりの道を通して欲しい人ですむわけがないのだから。
「てめぇこそ、こっちのジャマしてんじゃねぇよっ!
 やっちまえっ!!」
 地面に唾を吐きつつ、少年に言うと、男は顎で少年を指した。
 すると、他の男たちが一斉に少年に殴りかかる。

「ぐへっ」
 次の瞬間に痛そうな声を上げたのは、少年ではなく、一番先頭にいた男だった。
「うぎゃっ」「ぎゃっ」「かはっ」
 他の連中はその様子を見ていったん止まろうとしたが、やる気満々で突進していっただけに、急には止まれず、少年へと突っ込んで行き、吹っ飛ばされるように路上に転がった。

「な、な、……なんだぁっ!!」
 そんな叫び声を上げるリーダー格をよそに、少年は前に進んでいった。
 そのまま通りの方へ向かう少年の肩をリーダー格はつかんだ。
「このままですむと思ってんのかぁ!!」
 リーダー格は叫びながら、拳を振り上げた。
 少年は肩に置かれたリーダー格の手をつかむ。

「がっ」
 リーダー格の拳は振り下ろされる事無く、彼の身体は地面に叩きつけられた。
 少年はパンパンと手を叩いて、通りへと向かって行った。


 そして、女性もいつの間にやら消えていた。
 どうも、リーダー格が少年にかかっていった時に、ちゃっかり逃げていたようだ。

★ ★ ★ ★ ★ ★ ★

「あの時のナンパみたいな事をしていた人たちかっ!」
 少年が指差すと、全員やっと思い出したかという風に頷いた。
「で、何のよう?」
 思い出したものの、なぜ探されているのかが納得いかずに少年は尋ねた。

「もちろん」
『お礼参りだ!!』

 嬉しそうにリーダー格が言い、全員とはもり、嬉々と襲いかかった。
「さっきは油断したけど、今度はそうはいかないぜ!」
 一人がそう言い、各々、鉄パイプや金属バット、サックなどを取り出し、少年を囲んだ。
「…………ふ〜ん」
 少年は平然として、囲んでいる男たちを見回した。
「カクゴしやがれっ!!」
 金属バットが振り上げられた。

「うぎゃぎゃぎゃぎゃ……!!」
 がバットは振りおろされる事はなかった。
 少年が手をバットの男に向けると、手の平から小さな雷が飛び出し、男は悲鳴を上げて失神した。
 ぷすぷすと少々焦げた感じが洋服にみられる。

「油断ねぇ〜」
 少年はどことなく、挑戦的に緑の瞳をぐるりとあたりに向ける。
 全員、今の出来事にショックを受けているようで、その場から動けず、呆然としている男に目を向けている。
「てめぇ……魔法使いかっ!!」
 いち早く、ショックから立ち直ったリーダー格がそう叫んだ。
「そうだよ。
 さっきもさぁ、ちょっと腕に魔法の力を加えて、ついでにあんたらの重力操作もしたんだけど、
 気づかなかった?」
 もしそうだとしたら、鈍感な神経しているね。
 とでも言いたそうに、少年は首をかしげた。

『あっ……!?』
 実際になんとなく、そんな事を感じ取ったのだろう。数人が声を上げた。
「とりあえずさぁ、
 あんたらに付き合うの、メンドイんだ。
 つーわけだから、眠ってなよ」
 少年はだるそうに大き目の雷を浮かべた右手をかかげて、さらりと言う。
 そして、同時に雷がいくつの線状に分かれて、少年を中心として、円をかくように広がった。













 少々焦げた匂いが漂う裏路地に、「ううう……」というようなうめき声がいくつも聞こえた。
 雷は全員に命中をした。
 特に男たちは持っていた即席武器の他にも金属製のアクセサリとかを持っている者もいたので、とても電気の通しは良かった。
 そんな転がっている男たちを尻目に空を見上げた少年はポツリと呟いた。

「ここ、どこだろ?」


おわり
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