cigarette
風月 藍


 ふー……

 夜の闇の中、白い息が風にたなびく。
 冬でもないのに白い彼の吐息。
 それもそのはず、彼は煙草を吸っているのだから。

「……どうした?」
「うん…ちょっとね……煙草ってそんなにいいものなかのかなぁって思っただけ」
 私はソファの背もたれに顔を置き、ベランダに立つ彼をジーと見る。

「吸ってみるか?」
 すこし唇の端をあげて、彼は煙草を振った。
「いい…
 その臭い好きじゃないし」
 私は、煙が自分の方に少し流れてきたので、手を振って煙を散らす。
 どうにも、煙草の臭いって好きじゃない。

「ふーん。  好きじゃない割には、俺に特に注意しないよな」
「んー…臭いは好きじゃないし、自分で吸いたいとも思わないよ。
 ただ……」
 言葉を続けようとする私を見ながら、彼は小さくなった煙草を灰皿に潰し、新しいのに火をつける。

 シュボッ

 顔を少し下げ、唇に咥えた煙草にライターの日をつける。
 人差し指と中指の間に煙草をはさみ、少し息を吸い込む。煙が彼のなかへと流れていく。
 手の平を顔につけた状態で、あごの辺りに小指がかかっていたりする。

 その動作や形が、私は好きなのだ。


「…ただ?」

「そうしてる貴方を見るのが好きだから。言わないのよ」
 にっこりと微笑み、私が言うと、彼は少し照れたようで、そっぽ向いてしまった。

 夜景の暗闇の中、彼の頬に朱がさしているのがよく分かる。
 笑いがついついこぼれてしまった。

「んっだよ…」
 カリカリカリ…
 頭を掻く彼の指の間にはさまった煙草から煙が揺れて、風に流されて消えていく。

 闇の中に融けていく、煙。
 その儚い一瞬の流れも私は結構好きだった。

〜END〜




+あとがき+
煙草をテーマに小説。とあるキッカケからやろうとして、無理だった作品(笑)
雰囲気は結構好きなのでアップー。
煙草は嫌いです。害もあるし、臭いも嫌い。
でも、仕草は嫌いじゃないので、マンガとか絵でみるぶんには良しっ、私に害ないしw
inserted by FC2 system