自然の美しさで有名なアジール王国。
王都のすぐ側に広がる一際美しく一際広大なシーニックの森。
もし、鳥の目で見下ろしたら、そこには緑の海が王城の背後にそびえる山脈の麓まで続いているのが見えるだろう。
空に流れる風にのり、気持ち良さそうに鳥たちは編隊を組んでいた…のだが……
「ほえーーーーーーーーーーーーーーっっ?!!?」
突如響く、甲高い大きな声にバサバサッと樹海から鳥たちが飛びだし、飛行中であった鳥たちの編隊も崩れた。
―――数刻前
太陽がまだ昇り始めた頃、カサカサと音を立てて一頭の馬が森を歩いていた。
「んーっ」
その馬の背で一人の少女は大きくノビをした。
「やっぱ、朝の散歩は気持ち良いわね、ガイア」
薄い茶色の毛並みを撫でて少女は馬に話しかけると、馬はうなずく様に小さくいなないた。
穏やかな木漏れ日の中、一人と一頭は散策を楽しんでいた。
「んっ?」
しばらくして、少女は長い草から緑に埋もれた茶色の物体を発見した。
何だろう?と思った少女は馬を止めると軽やかに地面へと降りた。
そっと上からのぞいてみるとどうやら生き物らしい事は分かった。
少し迷って、少女は倒れているそれを抱き上げた。
気絶しているのかピクリともしないその動物はずいぶんと大きなふくろうであった。
「あっ…」
ケガしてる、と呟いた少女は翼のつけ根から見える羽根に覆われていない肉と固まりかけの血をみつめていた。
「大丈夫かなぁ?」
どうしよー、と思った少女は思わず相棒を振り返った。
しかし、馬も困った様に首をかしげる事しかできなかった。
「あっ、そうだっ。
小川があるからそこに行きましょう。
血を洗ってあげなきゃ」
思いついた少女は早口に言いながら自分にうなずいて、ふくろうをっかえたまま馬に再びまたがった。
パシャッ…パシャッ…
手で水をすくい、そっとつけ根の血を洗い流す。
ある程度、綺麗になると上着のポケットからハンカチを取り出して簡単な手当てをする。
「これで良しっと」
ズボンをはいたヒザの上にふくろうを横たえて、少女は笑った。
「ふさふさぁ」
傷の手当てをしおえて、梟の毛並みの美しさに思わず少女はふくろうを撫でていた。
その時、気を失っていたふくろうの意識が戻った。
「あっ起きた」
ぴょんっと地面に降りキョロキョロとあたりを見回しているふくろうの行動に嬉しそうに少女は笑みを深めた。
「良かった、傷は深くないみたいだね。今度は気をつけてねっ」
少女はふくろうにそう告げて立ち去る為に立ち上がろうとした。すると、突然、
「ここは…西の小川か…」
綺麗な男性のテノールが響いた。
へ?と少女はあたりを見回して声の主を探したが誰もあたりにはいなかった。
「お前が傷の手当てをしたのか?」
「うんっ……てぇっ!?」
下から聞こえた先程と同じテノールに反射的にうなずいてしまった少女は目を丸くする。
「どうした。何を驚いている?」
美しいテノールの言葉が聞こえると、ふくろうのくちばしが動く。そしてふくろうは愛らしい動作で首を傾げる。
つまり…声の主はすぐ側にいたという事。
「ほっ…」
「ほ?」
少女が出す音にさらに首をかしげるふくろう。
「ほえーーーーーーーーーーーーーーっっ?!!?」
ガササッバサッバサササッ
少女の甲高く大きな叫びにふくろうは飛び上がって驚き、あたりの木々から鳥や動物たちが飛び出して逃げていった。
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