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悪夢。 そうこれは悪夢なのだ。 薄っすらとした意識の中、サタンは思考をおこした。 闇という闇を集めた空間。 それ自体は魔王であるサタンにとって、意味をなしはしない。 しかし、彼の意識の欠けらが、今、彼自身に悪夢を見させる。 彼にとって最悪とも言える悪夢。 人にしてみれば、ツッコミたくなるような、そんな悪夢。 「シェゾvあ〜んv」 サタン自身がその魔力を認め、后の証でもあるカーバンクルと今一緒にいる少女。 その彼女が別の男に対して、蜜月の如く、新婚さんの如く、甘い声で男に食事を食べさす。 「んっ」 それをさも当然の如く食べる男。 「おいしい?」 「ああ、うまい」 幸せいっぱいとでも言いたそうな二人。 やめろ……! やめてくれぇぇぇぇぇぇ!! あるるぅぅぅぅぅ…… なさけない涙声。 涙の海に、可哀想な男の声がこだまする。 「やめろぉぉぉぉ…!!!!」 がばりっとサタンは起き上がった。 「…………ゆめ?」 寝ぼけた、涙を流した後が残る目であたりを見わたすと、 そこはいつもと変わらぬ自分の寝室。 「ははは、そうだよな。 まさか、アルルがあのような変態に……」 とはいえ、変態がちょっかいをかけているうちにぐらりと来る事も…… 夢のせいか、マイナスにどんどん進んでいく思考にかられて、サタンはすぐさま水晶の元に向かった。 いつもどおり、あの魔力をつかみ、魔力がある場所を映し出す。 ビキッ まるで空間そのものが凍結したように、サタンは硬直した。 そこには、いつものように少女と 部屋を埋め尽くしているぬいぐるみのモデルであるカーバンクルが食事をしている ……はずなのだか、 なぜか、サタンの悪夢に現れた男つまりは変態こと闇の魔導師がそこにはいた。 夢の如く、ただ違うのは朝食と言う事でパンなどを食べている二人。 「うわあああああああああああああああああ!!!!!!」 とてもとても、近所迷惑な叫び声とともに硬直をといたサタンは、思わず水晶を粉々に打ち砕き、二人がいる場所、アルルの家へと飛び出していった。 「うおぉぉおおぉぉあうおえああぐぅうおおおうっぅううおおうお……!!」 どこからともなく、と言うか外からとても奇妙な叫び声のようなものが聞こえた。 アルルとシェゾは、食事をしつつ、外へと目を向け、お互いを見た。 「ねえ、何だと思う?」 「さあな…… ……気のせいじゃなきゃ、近づいてきてるぜ」 「あああうおうおうおえああうおおおおううぅあああおおうぅぅおぉぉ……!!」 バァンっ!! 凄まじい音がしたと思うと、扉が開け放たれて、壁にのめりこんでしまった。 奇妙な叫び声のようなものは実際にサタンのとても奇妙な涙交じりの叫び声であった。 道々に水溜りの後が点々とできているぐらいの量を両目から流すサタンは、ただただ涙し、叫んでいた。 「……………………」 サタンの奇態に、事態についていけない二人は固まってその様子を見ていた。 と、突然。 ジュオッ 「どわあああああ!」 赤い閃光に二人は飛びのいてよけた。 一拍おいて、爆音が響き、食事類が吹っ飛ぶ。 「てめぇっ!何しやがる!!」 アルルを腕に抱えて、シェゾは閃光を放ったサタンを怒鳴りつけた。 「……………………て、おい……」 サタンはいっこうに聞いていなく、今にも嫉妬の炎が現実化しそうなほどの眼差しでシェゾを睨みつけていた。 「我が后に近づくなぁぁあああああああああああああああああ!!!!!!!」 「キミのじゃないでしょう!」 アルルのツッコミも空しく、サタンは理性もなく暴走状態で、アルルの家を魔法で次々と吹っ飛ばした。 といっても、どれもちゃっかりシェゾを狙っていた。 それをアルルを抱えたまま、シェゾやよけるものだから、暴走はいっこうに止まる気配を見せない。 「あぁ、ボクの家がぁ〜」 全壊した家を前に、アルルが涙を浮かべていた。 そして、キッとサタンを睨みつけた。 「うっ……」 ルルーもビックリな大迫力で、アルルは戦闘状態に。 それに負けそうなサタンはたらりと汗を流しながらあとずさる。 「ぐー!」 そこに、怒った感じのカーバンクルが加わる。 食事の邪魔をされたのが、かなり気に食わなかったようだ。 すでに何か、悪い予感でも感じ取ったのかシェゾは少し離れた場所に移っていた。 「さぁ〜たぁ〜ん〜〜〜〜!」 ざっ、アルルとカーバンクルが一歩踏み出す。 準備万端の様子にサタンは言葉を失い、真っ青になっていた。 「あう……あっ……」 「ジュゲム!!!!!」 「ぐー!!!!!」 白い光と光線。 激しく爆音と煙があたりを包んだ。 「――――――――――――――!!!!!」 言葉にならない。というか、爆音にかき消されたサタンの悲鳴が尾を引いて消えていく。 空の彼方に消えたサタンを見上げて、シェゾは「バカが……」と呆れた風に呟いた。 「あう〜。 カーくん、これからどうする? 宿屋に泊まるのお金かかるしねぇ……」 「ぐぅ〜」 「って、カーくん寝ないでよう……」 顔を突き合わせて、困り果てるアルルと寝ているカーバンクルにシェゾが近づいていく。 「おい、何してんだ。 いくぞ」 「へ?」 シェゾの言葉に、どこに?と言う風にアルルは顔を上げた。 「宿屋に泊まる必要なんかねぇだろ」 「どうして?」 歩き出すシェゾの後ろを付いていき、アルルが聞くと、 「俺ん所くれば良いだろうが」 あっさりと、さも当然とばかりにシェゾは言った。 「…………あっ、そうか」 アルルも、それがあったかと、当然のように受け入れた。 もしかしたら、二人の仲は、サタンが知らぬ間に、 サタンの夢のような、仲睦まじい仲になっていたかもしれない。 「寒いねぇ……」 アルルが呟き、隣のシェゾ見ると、バサリッとマントがアルルの身体を包む。 「これで良いだろう」 シェゾはアルルの耳元に呟いた。 二人はマントの中で密着した状態にある。 「うん」 アルルは更に寄り、シェゾの腕をつかんだ。 どこからどうみても、仲睦まじい恋人たちにしか見えない二人は、寒さも何のその。 シェゾに家にとむかい歩いていった。 〜おわり〜
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