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夜の黒の中にボクはいた。じっと黒の中に浮かぶ青を見て、彼の事を考えていた。 湖に浮かぶ月のように白い銀色の髪、湖の澄んだ青の瞳、いつもどこか皮肉な感じのする瞳の光。 一つ一つが確かにボクの中に浮かんでくる。同時にボクの胸の鼓動が早くなる。身体が熱い…… 「はぁ……」 ボクは自分の気持ちにため息をつく。 ボクは一人前の魔導師になるまで恋をしないって決めていたのに、 ……どうして彼に逢ってしまったんだろう。 彼が他の女の子と話すだけでボクはその女の子が羨ましくて、近づいて欲しくないと思ってしまう。 ボクは嫌な子になっていく。 彼のする事、一つ一つに僕は喜んだり、悲しくなったりする。自分じゃ止められなくて。 もっと楽しいものだと思っていたのに、どうしてこんなに苦しいの? ボクは湖から空に顔を上げた。その時に身体の周りを光が舞う。 「わぁ……」 ここはホタルがいっぱいいるんだっけ。 湖の一面にいっぱいの淡い光が舞う中、ボクはそれに見とれていた。 つぅとさっきからたまっていた涙が流れる。 彼の事を思って苦しい涙なのか光に感動した涙なのかボクにもわからない。 けど、ボクは涙を拭かずそのままじっと光の舞と湖の青と月光の銀の輝きを見ていた。 ……どのくらいたったか分かんないけど、いつの間にかほてったからだが冷たくなった頃。 すぐそばの茂みからパキッと小さな音が聞こえた。 ボクは思わず音の方向を見る。 そこには彼がいた。 僕の心の病の原因でもある銀髪碧眼の青年シェゾ・ウィグィィが。 「シェゾ!?」 ボクが驚いて彼の名前を言うと、シェゾはいつもの無愛想な表情でこっちに歩いてきた。 「なに泣いてんだ?」 いつもの皮肉な感じのする瞳を向けてそれでもどこか優しい声でシェゾは言う。 「べっ……別に、なっなんでもないよ」 ボクは慌てて、涙を拭くとシェゾに言った。 「ふ〜ん、ならいいが。こんなとこにお前がいるなんてな」 シェゾはいまだに湖で舞うホタルを見ながらそんな事をいった。 「シェゾこそ」 僕はまた高鳴り出した鼓動や熱くなる身体をごまかすように言う。 「…………………………………………」 沈黙が流れる。 ちょっと気まずそうな中、ボクは思った。 もう少しだけでいいから、この時が少しでも続いて欲しい。 ボクは弱虫だから、自分で決めた事を破りたくないから、この想いをキミには言わない。 ずるいよね、一緒にいたいって思うのに何もしないなんて。 それでも、もう少しだけ…… 「アルル……この湖がなんていうか知ってるか?」 あいかわらず、シェゾは湖を見たまんま言う。 「妖精の湖でしょう。 確か、ここのホタルがとってもいっぱいできれいだから妖精のようだって言う事で言われるって」 ボクは本当にそうだなぁと思いつつ言う。 「そうだ。 それともう一つ、ここは魔力に満ちている。昔はここにいる妖精たちを誰もが見えるくらいにな。 今もいるけど、力ある人間にしか見えない。 ……実際に妖精を見た連中が名づけたのかもな」 シェゾは口の端をあげて笑いながら言った。 「妖精……」 妖精さん、彼にあわせてくれてありがとう。ボク、少し気持ちが楽になった。 確かに、これは苦しい気持ちだけど、だからこそ大切なんだね。 今日、ここでシェゾにあえたのがなんとなく妖精さんのおかげな気がして、ボクは心の中でお礼を言った。 それから、 もう少しだけ、このままで…… 心の中で小さくお願いをした。 FIN |