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月が淡く優しく琥珀色の輝きを放ち始めた宵が少し深くなった時刻。 バタリ、と本を閉じる音が薄暗い部屋で静寂を破った。 創られた明りに、青年の髪が銀光を帯びる。 青年は読み終えたばかりの本を棚に戻すと寝台に近づいた。 バサリ、上着代わりに羽織っていたマントを寝台に引っ掛けると、すぐそばの窓から差し込む光に誘われるように窓を開け放った。 少々肌寒い風が青年の髪を揺らす。 その風自身が歌っているかのように音を青年に届けた。 「?」 こんな時間に?と青年は訝しむように蒼い瞳を輝かした。 「………………」 暫くしても歌はやまなかった。 バサァッ… 再びマントを羽織り青年は表に出て行った。 闇の魔導師シェゾ・ウィグィィ 『神を汚す華やかなるもの』 それが青年のも持つ名であった。 ――eternally am waiting for you シェゾが風上へ歩むに連れ、歌ははっきりとしてきた。 ――If it keeps him waiting too much, since I am which pursues you and goes, 柔らかな少女の声だとわかる範囲までシェゾが近づくと、小川の側にたたず佇んでいる一人分の人影が見えた。 「I will come back to my place…」 聞き覚えのある声とシルエット。そして何よりも彼が欲してやまない魔力の波動。 「アルル…」 小さな呟きだった。 しかし、人影はその小さな声を聞き逃さなかった。何度も聞いているその声を。 「……っ! ……シェゾっ」 少し高くなり白みを帯びてきたフル・ムーンの下、歌姫は満月のように金色のその瞳を丸くした。 少女の名はアルル・ナジャ。 今はまだ、魔導師の卵である。 「意外だな。お前が他国の言語で歌を歌えるとは…」 本当に意外と言う風に彼が言うと、アルルは少し顔をふくらませた。 「それってボクのバカにしてないっ?」 「いや別にそうゆうつもりでは言っていない」 あっさりとアルルの怒気を流し、シェゾはアルルの隣に立った。 「……まぁ、実際ボクが知ってんのはこれくらいだけど…」 ぽそっ、とアルルは呟いた。 「何か言ったか?」 その言葉はとても小さなかったので、シェゾが聞くことはなかった。 「何でもないっ」 ふくれ面でシェゾの質問に答え、アルルは座り込んだ。 柔らかな草が足をくすぐる。 「…もう歌わないのか?」 「へ?」 まさか、シェゾにそんなことを言われるとは予想だにしていなかったアルルはきょとんっ、と隣に座った彼を見て固まっていた。 「どうした?」 シェゾは固まるアルルの眼前で手をふった。 「……あ、いや…ちょっと意外だっただけ。 キミにそんなこと言われると思ってなかったから」 「………………」 アルルが正直告げた言葉にシェゾは憮然と黙り込んだ。 くすっ そのしかめ面にアルルは微笑を零した。 「…なっ…」 「I will wait for you by somewhere under this moon in somewhere in this darkness. 」 なんだよっ、と文句を言おうとしたシェゾの声をさえぎ遮るように、アルルは歌いだした。 「Although I which I believe all the time that you are even if you leave here eternally am waiting for you.」 静かな小川が流れるように、アルルの声は鈴ッと響いた。 「If it keeps him waiting too much since I am which pursues you and goes, I will come back to my place…」 余韻を残し、歌は闇へ飲まれていった。 ほぅ…と一息、アルルはついた。 「……恋愛歌…みたいなもんか…」 シェゾはゆっくりと今聴いていた歌詞を頭の中で反芻し、自身の言葉に頷いた。 「わかるの?」 ちょっと驚きながらアルルはシェゾを見つめた。 「お前と違ってな」 ニヤッと意地悪な笑みを浮かべたシェゾに、アルルはむぅ…と顔をふくらました。 くっくくく…喉を震わしシェゾは笑っていた。 「なんだよぉ」 自分が子供のようにす拗ねているのを笑われているとは知らず、アルルはさらにふくれ面になる。 「…ねぇ、意味わかるんなら教えてよ」 笑いで震えているシェゾの背中をペシペシ叩きながらアルルは好奇心で瞳を輝かして聞いてきた。 「…………だから恋愛の歌だよ」 ひとしきり笑うとシェゾは言った。 「聞いてきたって事は、意味も知らないで歌ってたって事だよなぁ」 やっぱ他国の言語をアルルが…と、うんうんシェゾは頷いていた。 「どーせ…」 ぶすっとアルルはそっぽ向く。 「……それより、どーゆ歌詞なの?」 袖を引っ張るアルルに仕方ないとため息をつき、 「…旅立つ男に女が送った歌、って感じだな」 歌詞を思い出しながらシェゾは訳し始めた。 「この闇のどこかで この月の下のどこかで 私は貴方を待つでしょう 永久に たとえ貴方がここを去ったとしても 私はずっと貴方を信じてる 私は貴方を待っています けど―― 待たせすぎると 私は貴方を追いかけて行くよ だから私のところに帰ってきて」 棒読みながらも女性っぽい言い方でシェゾは内容を言うと「翻訳するとこんな風になる」と続けた。 「ほへー」 アルルは感心して、そ―なんだっと呟いた。 「……ちょっと切ないようで明るい…のかなぁ?」 アルルはシェゾの訳に自分を重ねながら理解しようとした…が、少しわかり辛かった。 「ボクなら絶対ついて行くのに」 ちらりっとシェゾを見ながらぽつり呟き、アルルは空を見上げた。白みを帯びた月が煌々と輝いていた。 「ずいぶん時間経ったね…」 「んっ…ああ、そうだな」 月明かりの光を纏うアルルをボーと眺めていたシェゾは、アルルの言葉に空を見上げた。 白い輝きは銀光となり大地を静かに照らす。 「月は…」 アルルは何かを言おうとした。 「月は?」 シェゾが問う。 「月は、いつも独りで淋しくないのかな…」 「?」 アルルの言葉の意味がつかめず、シェゾは首を捻る。 じっと月を見上げながらも何か別のものを見つめているようにアルルは遠い目をしていた。 哀しそうな雰囲気に月光を纏うアルルは、今にも消えそうな精霊のように儚くみえた。 ――…………っ! 衝動がシェゾを襲う。それは今まで彼女と対峙してきた時に何度も感じたことがあるものだった。 その全てを奪い去りたい… そんな欲望が入り混じった想い。 「何してんの?」 否定するかのように激しく首を振っているシェゾを心配そうにアルルが見つめる。 「いや、何でもない」 いい加減気付いてはいた。認めたくないが。 シェゾは心の中でそう呟きながらアルルに答えた。 「…月が孤独ねぇ」 先ほどのアルルの言葉にシェゾはもう一度首を捻った。 「別に独りじゃないだろ。星も在るんだし」 「……そうかな…」 シェゾは月の周りを囲む星に目をやり告げた。 それに対してアルルは同じように見上げ一瞬首を曲げた。 「ボクは星になれるかな…」 「はあ?」 アルルの呟きにシェゾはす素っ頓狂な声をあげた。 「ううん、何でもないのっ。気にしないでっ」 アルルは頬を赤く染めて首を振った。 「ボ、ボクそろそろ帰るねっ もう遅いし…」 真上まで登った、蒼がほんのりかかった白き星を見上げてアルルはそそくさと立ち上がった。 「あっおい」 突然の動きにシェゾは思わず腕を掴む。 「ひぁっ…な、なに?」 「…………」 振り返ったアルルに問われ、実は特に何かを言おうとしたわけではないシェゾは答えに窮した。 「……送る。転移した方が早い」 とっさに思いつき、シェゾはアルルの肩を抱いた。 このまま連れ去ってしまおうか… そんな誘惑に首を振り、緊張しているアルルに目をやる。 赤くなり、うつむく彼女は愛らしかった。 今までにないリアクションにシェゾは何かを期待してしまいそうな自分がいることを知る。 「…バカだな」 小さく小さく呟く。そして集中をはじめ、すぐに二人の姿はその場から掻き消えた。 XXX カタンッ シェゾは寝台に近づくと、いつものように窓を開けしばし耳を澄ます。 あの日以来、ここ一ヶ月ほぼ日課のようにシェゾは就寝前にこれを行なっていた。 もう一度、彼女の歌声を…… あの日、言葉にしたかった想いを… 日に日にそんな想いが強くなっていった。が、昼の時やダンジョンの時に出会うと何故かいつものようになってしまう。周りに人がいることも要因しているのだろう。 はぁ… 風が流れる音だけの中、シェゾはため息をつき、窓を閉めた。 あの日を思い出すと今の時が何か虚しく感じる。 シェゾはそんなことを考え眠りについた。 独りの夜、その中に。 -END
あとがき とうわけで、新作ていうか使いまわしUPーっ! とあるかたに某ブツを借りたお礼に送ったもの2つのうちの1つ。もう片方はいつ日の目見るのかわかりません。そうゆう内容だから。 プリントアウトを先にしたので、色々とフォントとかWordを弄くって書いていたのでなるべくそれと同じようにできないかと今回は文章全体にフェイス指定いれてみました。 とりあえず、毎度おなじみもどかしい2人です。好きです、決着を付かせないで自覚と決意だけさせるのは。 その後のことを書くのも好きですけどね。なんていうか、シェゾにそうゆうセリフを言わせたくないっていうか似合わねー、ていう本音が邪魔するのです(笑) さてさて、特にこれは気まぐれ赴くままに書いていたから深く書くことないですな。んじゃ、さらばっ |