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ある日の事。 サタンの塔に、一つの大きな破壊音が響き渡った。 「また、ケンカだわさ」 「飽きないのですかね〜」 揺れる塔の中、マミーとキキーモラは、ずたぼろにされているだろうサタンを思い、ため息をついた。 「サタン様のばかぁーーーーーーーーーーー!!」 そんな声とともに塔からルルーは走り去った。ものすごいスピードで。 「うううぅ〜……」 配下の予想通りの状態でサタンは倒れ伏していた。 「おい、何してんだ」 そこにテレポートで現れたシェゾが呆れてサタンを見ていた。 「うるさい……」 力なくサタンは言葉をはいてそっぽ向いた。 「で、今度は何したんだ」 暇つぶしにはちょうど良いとばかりにシェゾは笑いながらサタンにたずねた。 「…………………………アルルの様子をみていたのだ」 サタンはぼそりと長い沈黙の後に呟いた。 「はあっ?」 「お前のような悪いムシがつかんかと心配してだな」 「貴様にゃ、あの筋肉女がいるだろうが」 弁明しようとするサタンにシェゾは冷たくツッコミを入れる。 「うっ……!」 「バカだな」 無情な言葉にサタンはグサリと言葉の棘が刺さった気がした。 「まっ、俺には関係がないがな」 そう言うと、元の用件であった書斎に向かおうとした。 扉を閉めようと、手にかけた時、シェゾはふり返った。 「そうそう、忠告しておいてやるぜ。 女はこーゆー事に対してシツコイ。さっさと追いかけといた方が身のためだぜ」 意地の悪い笑みを浮かべて、シェゾは扉を閉めた。 閉められた扉の内側で、サタンはとても渋い顔をしていた。 (どうして、 いつもいつもいつもいつもいつもいつも…… サタン様はアルルのことばかりなの!!) ルルーの怒りは表情、雰囲気にもおおいに現れ、街の人々は誰一人もルルーには近寄らず、道を譲っていた。 岩をも砕く拳を受けたいものなどどこにもいない。 誰もが怯えていると、そこに一人の少女が歩いてくる。 「アルル!!」 ボーと歩いていたのは、今回のケンカの原因(といっても、彼女には何の責任はない)であった。 アワレ、生贄ハ自ラ、怒レル獣ノ前ニ現レタ。 「ほぇ?ルルー」 何か考え事でもしていたのか、下を向いていたアルルは、ルルーに声をかけられて初めて、その存在に気がついた。 「あんたがいるせいで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」 「ル、ルルー……く……くる……し、いよ……!」 むなぐらつかまれブンブン揺り動かされているアルルは、とぎれとぎれに訴えた。 「サタン様のバカー!!」 涙声にルルーは叫んだおかげで、手の力が緩まったので、アルルはルルーの腕から抜け出すことができた。 耳元で叫ばれたので、耳鳴りが起こっているが、アルルはとりあえず、ルルーをなだめた。 「ね、ねぇ、ルルーどうしたの? こんなところじゃ目立っちゃうよ。 ボクの家にでも行く?」 質問的な言い方ではあるが、アルルは周りが見えていないルルーを引きずるように連れて行った。 「で、どうしたの?」 アルルの家につき、しばらくすると、ルルーも落ち着きだした。 テーブルにはいつものおしゃべりの時のように、お茶とお菓子がある。 「またサタンとのケンカ?」 首をかしげて言うと、アルルはお茶を一口飲んだ。 「そうよ。 サタン様ったら、いつもいつもあんたの事ばかりで。 わたくしを選んでくださったはずなのに……」 「僕のこと?」 ルルーの愚痴にアルルが再び首をかしげる。 「そうなのよ。 サタン様は水晶を使ってあんたの様子をのぞいてるのよ」 「うえっ!?やだなー、それ。 ルルーの言い分ももっともだね」 気持ち悪そうに眉をひそめ、アルルはルルーに同意した。 「そうでしょう! だから、今日は泊まらせてもらうわよ」 「ええ!?」 急に脈絡もなく出たルルーの言葉に、アルルはなんでどうして?とつめかかった。 「まだ愚痴が言いたりないわ。 それに、外もすっかり暗くなってるし」 まさか、夜遅くに女一人を追い出すなんてしないわよね。と目だけが笑っていない笑みを浮かべた。 これで頷かなかったら、殺される。そんな風に思ったアルルはただ頷くしかなかった。 その夜。 ルルーの愚痴に付き合っているうちにアルルはいつの間にか眠ってしまった。 「たく、しかたないわね」 そう言いながらも、ルルーは優しく毛布をアルルにかけた。 ルルー自身も眠ろうかと思ったが、まだ気分が高まっているのか、寝付けそうにない。 「気分ざましにでも、出ようかしら……」 ぽそりと呟き、ルルーはアルルを起こさないように外へ出て行った。 アルルの家の近くに立ち、ルルーは何となく空を見上げた。 晴天の夜空は明かりとなり、大地にルルーの影を落とす。 何をするともなしにボーとしているようにも見えるが実際には、心の中で色々と考えていた。 と言っても、どれもサタンの事ばかり。 サタンは自分の気持ちを受け止めてくれた。受け入れてくれた。 なのに、いまだにアルルを見ている。 自分はなんなのだろう…… サタンにとって自分は、どんな存在なのだろう…… 自分はいなくても良いのではないか。 不安の入り混じった思考はルルーの中で流れ、膨れ上がる。 「サタン様……」 ルルーが呟いた時、影がルルーにかぶさった。 上を向いていたルルーは月の逆光で影になっていても、それが誰であるかすぐに分かった。 けど、怒っている気持ちがまだ残っていて、わざと声をかけず、目をそらした。 ばさりっ、と静かな夜に翼の音が響く。 ちょうど、ルルーの後ろに降り立ち、その人物は翼をしまった。 「ルルー」 降りてきた人物はサタンであった。 「……………………」 ルルーはふり返らず、そして返事もしなかった。 サタンも何を話せばいいのか整理できていなかったのだろう、呼びかけたはいいが、言葉が続かない。 長い沈黙を破ったのはルルーのほうだった。 「サタン様、わたくしはまだ怒っているんですよ」 静かな言葉に、サタンはただ頭をさげた。 「すまん」 「あの子のことが心配なのは分かります。 けど…… あなたが選んだのは誰ですか……!?」 ふり返ったルルーの瞳には不安と涙が浮かんでいた。 「ルルー……」 サタンはめったに見せないその涙に、反射的にルルーを抱きしめていた。 「サタン様…!?」 驚くルルーの耳元で、サタンは小さく呟くように言葉をはいた。 「私が選んだのはルルーだ」 はっきりとした言葉に、ルルーは嬉しさがこみ上げくるのを感じた。 「サタン様……」 抱きしめるようにルルーは、サタン首に腕を回した。 サタンは、ルルーの頬にそっと手を添える。 二つの瞳がぶつかり合う。 同じ想いがそこにはあった。 月と星の明かりが大地に二つの影を下ろす。 あわさった二つの影を。 〜FIN〜 |